極限微生物とは

極限微生物は、温度、pH、塩濃度、圧力、放射線など、過酷な環境で生きることができる微生物です。通常の環境に生息する微生物にはない特長や能力を持っています。例えば、高い温度でも生きられる「高度好熱菌」は、酵素やDNAなどの生体物質がその温度で破壊されずに働きます。これらの分子を産業的に高度に活用することで、これまで得られなかったバイオ技術を実現することが出来ます。

スーパーリポソームとは

極限環境で生育するバクテリアは、それぞれの環境に適応するために面白い構造の脂質を持っています。その中には生物資源として有用なものもあり、特に高度好熱菌から採取された極性脂質は化学的に安定なばかりでなく、それを使って製造した脂質ベシクル(リポソーム)も高い安定性を持っています。

一般脂質から製造したリポソームは、そのベシクル内に物質を封入することが可能ですが、高温状態では簡単に膜が破れてバーストしてしまい、内包された物質が外に漏れ出してしまいます。

それに対して、高度好熱菌の脂質を材料にしたリポソームは100℃でも安定で、加熱滅菌にも耐えらるため、薬剤を封入して標的細胞に送達するDrug Delivery Systemの運搬体として有効に活用できると期待されています。 このようなリポソームをスーパーリポソームと呼び、医療分野をはじめ様々な工業分野に活用するために開発が進んでいます。

 

極限微生物脂質の分子動力学シミュレーション計算

分子動力学シミュレーションによる解析は、計算科学的な手法により動的構造を推定し、静的構造からはわからないより多くの情報を引き出す手法です。極限微生物のユニークな脂質分子に適用することで、スパーリポソームの設計を行います。

① リポソームの耐熱化

一般的なリポソームを80℃で保存すると、膜が破壊され内容物が漏洩する。膜の成分を変えて漏洩しないリポソームを作る。


② 不安定な物質の安定化

ビタミン類 (レチノール、VE、VD)、CoQ10、キサンチン類

③ ホールド性(ホールド性(Drug Delivery System ,DDSに応用) ・薬剤(抗がん剤、虚血性疾患)
抗がん剤のDDSに応用 :EPR効果を利用
・遺伝子治療(DNA)
・イオン(H、Fe、Ca、Mg)の透過性の制御による内包物質の安定化(胃酸でも安定)